『チャームポイントは…』


「…ふん。くだらねー」
眉間に皺を寄せ、画面から顔を背けた跡部の言葉に。
「なに言うてんねん。感動超大作やんか」
テレビの映像を指差し、忍足は力説した。
「めっちゃ、かわいいやん」
「…1人で観てろ、バーカ」
へらっと笑った顔に、跡部は冷たく言い放ち、付き合っていられないと鞄から文庫本を取り出す。
けれど、このくらいで凹む忍足ではなかった。
その長い腕を伸ばし、跡部の手から本を取り上げると。
「跡部、さっき「一緒に観る」て言うたやんか」
その体を後ろから抱き締める。
「それとも、観とない理由でもあるんか?」
「っ! そんなもんあるわけねーだろ、あーん?」
むきになったように言い返した跡部に。
「そんなら、大人しゅうしててな」
ため息を落とすと仕方なく、跡部は抱き締められた姿勢のまま、テレビに視線を移した。


数分後。
「…跡部?」
ぐすぐすと鼻をすするような音に、驚いた忍足が顔を覗き込む。
「…見る、な」
「せやかて、そない泣いて…」
力任せに拳で涙を拭う幼い姿に、穏やかな笑みが込み上げた。
「笑うんじゃねーよ…」
「笑てへんよ。ほら、そないしたら跡残ってまうやん。こっち向き?」
「ん…」
その目元の、濡れて光るホクロに口付け、忍足は低く笑った。
彼が動物ものに弱いのは知っていたが、こんなに可愛くなるとはちょっと意外だった。
これからも、時々こうやって泣く跡部を可愛がるのも悪くない。

とりあえず『あらいぐまラス○ル』に感謝。


END.




Yorozu-Emotionzの日下まりも様から頂きました!シンの絵に素敵SSが……!
差し上げたキリリク絵がSSになって返って来るなど初めてでした(笑)。跡部景吾めごいー……!
相当なときめきを有難うございました〜!