「……好きだ。跡部、…好きだ」
好きだ。
何度も、何度も。どうしてだろう、切なくなるくらい、その言葉は繰り返された。
あやふやに揺れる事なくひたすら真っ直ぐに、その眼差しは俺を捕える。
「どうすれば良いのか判らない」
どうすれば
ひっそりと吐き出される言葉に合わせ、その指先は俺の頬に寄せられた。ひどく、やさしく。
普段、なにものにも動じる事のない無表情に、怜悧な双眸に、僅かに滲む不安の色。
「お前が、好きだ、跡部」
1つ1つ噛み締めるように再び呟かれた、その言葉。
知ってるよ
静かに返すと、さらりと頬を撫でられた。その手つきは、壊れ物でも扱うかのように繊細だ。
戸惑っているように見えた。真っ直ぐに見詰め返す俺に、または、自分の感情に。
「テニス以外で、こんなに…、気持ちを、揺さぶられるのは初めてで、」
低く響く声は普段と変わりないようにも聞こえたが、その眼差しは熱を孕んでいる。
「どうすれば良いのか、判らない」
そう繰り返し、目を伏せ、
「……好きだ」
手塚は俺に言った。

どうしてだろう、切なくなるくらい繰り返されるそれに、優しく触れてくる、その指先に。
泣きそうになる俺のこの想いを、手塚は判ってくれるだろうか。





後書き:
素敵プチ満載のスパークに行けない悔しさをバネにSSを書こう・第1弾(長)。
TATは何気に初挑戦です。こんなに好きなのに書く機会が非常に少ないカプの1つ。

2008.8.30 シン




novel top