「俺ね。時々、訳も判らず喚き出したくなる時があるんだよ。どうしようもなく」
いつものへらへらとした顔で、千石がぽつりと呟いた。
「本当に、何に不満がある訳でもないのにね。突然だよ。前触れもない」
いきなり頭の中がぐちゃぐちゃになって落ち着かなくなんの。
シーツの上にぱらぱらと無造作に広がっている俺の髪の毛をつまみ、弄ぶ指。
時折こめかみの辺りを優しく梳くようにされ、心地良さに僅か目を細める。
「普通に飯食ってる時だったり、授業中だったり、こうして、君と話してる時だったり」
変だよね。
言いながらこちらを見遣る、へらへらとした顔つきの割に淡々とした、抑揚に欠ける声。
何でもない事のようにこちらに微笑み掛けながら、しかし俺の事を見詰めてはいない。
「ねえ、君にはない?そういう時」
じっとしていられなくなる時。
向けられる顔はやっぱりへらへらとしていたのに、何故だかぎくりとした。

「ねえな」
さっぱり判んねえ。

何故だか、嘘をついた。





後書き:
無茶苦茶短文。うん、千石、大丈夫かな。
と、思いながら何か物凄くどうしようもないのを書きたくなったのでした。

2007.8.31 シン




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