そんな涼しそうな面して、本当は、快楽に飢えた獣なんだろう?


俺は知っている。
気付けば樺地はいつも、俺にねっとりと絡み付くような視線を送ってきている。
テニスをしている時の、俺の首筋や鎖骨やちらちらと覗く脇腹に、滴る汗に、乱れた呼吸に。
俺の上気した頬を盗み見ながら、あらぬ妄想をかきたてているに違いない。
きっと樺地の頭の中では、俺はテニスの掛け声などではなく、もっと頼りない、
掠れた、切なげな甘い声を上げていることだろう。
樺地はそんな自分の想像の中の俺を、欲望のままに好きにするのだ。

(……ぁ……)
自室のベッドに腰掛けていた俺は、そこが頭を擡げている事に気付いた。
唯一身に付けていたバスローブの布地が不自然に盛り上がり、
その姿をぎりぎりのところで隠しながら、しかし確実に熱を主張していた。
(……樺地の想像の中の俺は、きっといつも、こんな格好ばかりで、)
淡い水色のバスローブの合わせからそっと左手を差し入れると、自らの胸に這わせる。
(樺地はきっと、こんな頼りない布きれ、すぐに剥ぎ取って、そして、)
洗い立ての素肌のさらさらとした手触りを感じながら胸の頂に辿り着くと、
人差し指の腹でふにふにと転がした。そこはすぐにぷつりと固く尖り、指を押し返してくる。
くりくりと捏ね回せば、それに合わせてびりびりと痺れるような快感が広がった。
「……は、ぁ……」
(樺地なら……あの大きな手の平で、俺の胸を、揉みこむようにしながら……)
いつの間にか湯上がりの肌は、這わせていた手の平にしっとりと吸い付くようになっている。
(太くて、ごつごつした指で、俺のここを、)
捏ねていた人差し指と、親指で固く尖ったそこをつまむと、くりくりと動かす。
「……は、ぁ、ん、」
じんじんと、倍加された快感は、簡単に下半身にも伝染していく。
(俺が嫌がっても、やめないで、きっと、強く抓って引っ張ったりして、意地悪するんだ、)
「ん、…ッ」
ぎゅうとつまんでいた指に力を入れると、バスローブを持ち上げていたそこが一回り大きくなった。
じわり、と、先が湿ったのが判った。
「…はぁ、…はぁ、」
空いていた右手で、結んだ帯はそのままに、合わせを大きく開いてはだける。
外気にさらされたそれが、ひくりと揺れた。
硬く大きく形を変え、しなるようにくいと上を向いた姿は、自分の身体ながらひどくいやらしい。
熟した先端からは、はしたなく涎を垂らし、どくどくと脈打つ茎に透明な筋を作っている。
(……俺の、ここ見て、樺地はきっと、すごく興奮して、)
すっかり荒くなった呼吸に合わせて震えるそこに、そっと手をかけると、
零れた雫を塗り込めるようにゆるゆると扱き始めた。ぞわぞわと、待ち侘びた感覚で頭が一杯になる。
「…ッは、ぁ、…かばじ…、」
(俺のここ、夢中で、時々ちょっと、乱暴に弄って、いじめて、)
茎がぱんぱんに膨れ、先端から透明な雫があとからあとから溢れて止まらなくなる頃には、
扱く手はすっかり早くなっていた。くちゅ、くちゅ、と、握る手を上下する度に水音が立つ。
「はあッ、はあッ、」
胸元に差し入れていた指の動きも、ますます忙しなくなる。
切なくなるくらい気持ちが良くて、前のめるように背中を丸めた。
「かばじ…ッ、はあッ、はあッ、」
荒い息の中、咥内に溜まった唾液を必死に嚥下すると、ごくりと大きな音が鳴り、
樺地も想像の中で俺を弄びながら、こうやって興奮で喉を鳴らすに違いない、と、
思った途端、
「あ、かばじ、かばじ、あ、あ、あ…ッ」
ぞくぞくと、一際強い快感に、耐え切れず白濁が吹き出た。
受け止めるのも間に合わず、それは勢い良く飛んでバスローブやはだけた胸や、俺の顔を濡らす。
「はあッ…、はあッ…」
生暖かい。ほてった頬から、ぬるりとした感触を残して精液が滑り落ちる。
「はあッ…はぁ…、はぁ…」
(……また、途中でイっちまった……)
溜め息をつきながら、まだバスローブの汚れていない部分で飛び散った精液を拭っていく。
(樺地ならもっと、いやらしい事を、たくさんしてくるのに)
俺の事を、想像の中ではきっと、何回も何回も犯しているに違いない。
俺の想像もつかないような、恥ずかしい事をして、させている癖に。

早く、本物の俺を犯しに来れば良いのに。





後書き:
恥ずかしい妄想ばかりしているのは跡部様ですよ!と言うね!
途中、単に樺地に犯されるのを想像してハアハアする跡部みたいになってしまいましたが、
この子はいやらしい跡部を想像して興奮する樺地、も、おかずにしていますよ。本物ですね!
これでこの樺跡の樺地が普通の激ノンケだったらどうしよう……!
跡部様可哀相……!
物っ凄く可哀相で萌……!(歪んだ愛)
本当は後ろまで使うG跡部を書きたかったのですが、余りにエロばかり長くなるのでやめました。
あ、これ、もしかして跡樺でもいけるのかな(そうでもない)。

2012.5.7 シン




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