※参加させて頂いたジロ跡アンソロ掲載の漫画の続きネタです。
※未読の方には楽しさ半減な内容なのでご注意下さい。





「じゃあ次、跡部の番ね!」
ジローはにこにこと、いつものように屈託のない笑顔で。
嬉しそうに声を弾ませながら、そう言ってのけた。
「しねえよ!!」
ともすればうっかり「仕方ねえなあ」と苦笑混じりに言ってしまいそうな程の、無邪気な笑顔。
いつものようにジローの行動を許してしまいそうになったが、今回ばかりは流される訳にはいかなかった。思わず返す声が大きくなる。
同級生の性欲処理に協力するなど、聞いた事がない。
「え〜なんで〜?」
思い切り不満そうに、膨れっ面を見せるジロー。
「何でも何もねえよバーカ!んなこと普通する訳ねえだろ!」
「……さっき自分はされてイッたくせに」
ふわふわした黄色い頭に平手を食らわせると、実に小気味良い音がした。
「いってー!!」
「ってめえが勝手にしてきたんだろが!」
大袈裟な悲鳴を上げて頭を押さえるジローに向かって、異議を申し立てる。冗談ではない。
何がそんなに気に食わなかったのか、いきなりちょっかいを掛けてきたのはジローだ。
誰が好き好んで野郎に自分のを触らせるというのか。さっきの行為を思い出し、再び羞恥に見舞われながら相手を睨み付けた。
そもそもさっきまでのしおらしい態度はどうした。よくもこんなふざけた事を言ってくるものだ。
何だか仕様もない勘違いをしてふざけた事をしておきながら、一人で萎れていたものだから、それでも誤解を解いてやったのに。
しかし、それを言うならば、自分も。
本気で拒絶するつもりならば、決して出来なくはなかった。自分よりもずっと小さいジローの力など、簡単にどうとでも出来たのに。
それなのに、何故きちんと、止める事が出来なかったのか。

(何で俺を置いてくの)
そう言ってくるジローが、あんまり切なそうな顔をしていて。
結局、最後まで、突き放す事など出来なかったのだ。

失敗した。
「何やってんだジロー!!」
俺は先程よりも大きな声で叫ぶ羽目になる。
ほんの少し気が逸れていた隙に、ジローは再び俺の傍に寄り制服を脱がしに掛かっていた。
必死に(そう、この俺が必死になってだ)その手を払いのけると、半分まで下げられていたファスナーを締め直す。
「えー、だって、跡部ももっかいえっちな気分になったら、一緒に抜いてくれると思って」
さも当たり前のように、そう訊かれる事の方が意外だとでも言いたげにきょとんと小首を傾げられる。
普段ならば、この小柄な同級生の愛らしい所作を、男とは思いつつも素直に微笑ましい気分になったりするが。
今はそれどころではない。
「……生々しい事を言うな……つか、その気になんかならねえし」
顔を顰めながら、こめかみを指で押さえる。何となく頭痛がしてきた。
「いいか、さっきの事は多めに見てやるから、好い加減寝惚けた事はやめろ、って言った傍から何で近付いてくんだよ!」
折角取った距離を正面からいとも簡単に詰めて来る、その両肩を掴んで止める。
「いた…っ」
「ぁ…」
力が入り過ぎてしまったらしい。ジローの顔が僅か苦しそうに歪んだのを見て、慌てて力を緩めた。
その途端、しめたとばかりに懐に入られる。
油断した。何と言う忌々しい奴だ。
「このやろ…っ、!?」
今度こそ力ずくでも押し退けようとしたが、密着された脚の辺りに違和感を覚え、そこではっと身体が強張る。
「だって俺、勃っちゃってるんだもん」
ぬけぬけと。そんな風に無邪気に笑いながら……生々しい事を言うな、頼むから。
「おま…」
「ね……わかる?」
言われなくとも気付かざるを得ない。ぴたりとくっついたジローの前は、はっきりと硬さをこちらに伝えてきていた。顔が、熱くなる。
その熱を主張するかのように、ぐいと擦るように更に押し付けられた。その感覚に、僅かに身体が震える。
向こうが動けば、当然こちらの布地も擦れる。
先程、物凄く不本意にも粗相させられたそこは、兎も角いつまでも曝け出しておくのが耐えられなかったので、
拭う事もせず、まず着衣の乱れを正す事を優先させた。
つまり、下着の中に濡れたまま収まっているという、非常に居心地の悪い状態な訳だ。
そんな状態で布地ごと擦られるのは、当然、気持ちが悪い。
ぬち、と水音を伴った衣擦れの音が聞こえてくる気がして、居た堪れなくなる。
うろたえた俺に気付いたのかどうか、ジローは、はあっと息をついてからこちらを見上げてきた。
「あー…こうするだけでもきもちいー……ね、こんなんじゃ帰れないしょ……?」
またぐいぐいと押し付けながら幾分か掠れた声で、囁くように言われる。ぞわぞわと何かが背筋を駆け抜けた。
まずい。何だかよく判らないが、非常にまずい気がしてきた。
「ちょ…まじでやめろ、って…」
しかし、擦り寄る身体を引き剥がそうと思いながらも、上手く力が入らない。
早く、早く離さなければ。この、熱っぽい視線を絡めてくる目の前の男から、離れなければ。突き飛ばしてでも。
頭の中はそんな風に焦りで一杯になるのに、それでも結局そんな事は、俺には出来なかった。
まるで子供を甘やかし放題の駄目親のようだが。俺にはジローを邪険に扱ったり、傷付けたりする事が、どうしても出来ないのだ。

後悔した。
「何やってんだジロー!!」
俺はつい先程も口にした台詞をこれまでにない程の大声で、又も叫ぶ羽目になる。
悶々と考え躊躇していた所で、ふと密着していた身体が離されたかと思うと。ジローはいそいそと自らの前を寛げていた。
「おま、んなもん見せんじゃねえよ!!」
普段とは形も大きさも変えているであろうそれを取り出すのは少々てこずるのではないだろうか、
などとこの状況の中やけに間の抜けた考えが頭の中に浮かぶ、自分が物凄く嫌だ。
しかしそんな俺の考えを他所に、そこは簡単に外気に曝け出された。
当然と言えば当然だが、俺は自分以外の、ましてやこんな風に熱を持ったそれを目の当たりにする機会などは、今までなかった。
初めて見る他人のそれに、思わず釘付けになる。
体格差がある分、矢張り自分のもの程はないが(それでも自分のだっていちいちまじまじとなど見ないので何となくだ)、
はっきりとした硬度を持ち、くいと上を向いた姿には、既に幼さなど欠片も残っていなかった。
赤く膨れた先端を見るにつけ、かっと顔が熱くなる。どくどくと、自分の心音が煩くなってきたような気がする。
まずい。やや余裕のなくなってきた頭で、また思った。好い加減、本当に、冗談では済まない。
急にそこを注視している自分が恥かしくなり、兎も角と視線を持ち上げると、再びジローと目が合った。
ああほら、だからそんな熱っぽい目で俺を見上げてくるな。
動けなくなる。
「触るだけ……ね、跡部、触るだけだよ」
言いながら俺の手を取るジローの手は、その眼差しと同じように、熱い。

ああ、また、流される。
それは結局、何だかんだで俺はジローに逆らえない、そういう事なのではないだろうか。唯の、本当に単なる同性の同級生相手に。
それが何故なのか。冷静でなくなりつつある頭の片隅で不意に思い浮かんだ疑問を、俺は考えずに押し込めた。
今ここで答えを求めるのは、酷くどうしようもない結論が導き出される気がしたから。



「……ん、」
握らされたそこを緩く扱くと、ごく小さく、ジローの少し鼻に掛かった声が聞こえた。
思った通り、硬くて熱い。どうすればいいものか少し迷いながら、取り敢えず全体を痛くないように気を付けながら上下に扱いてみる。
「ぅ、わ…」
微妙に間の抜けた声を上げて、ジローは俺の腰辺りに縋り付くように、両手でくしゃりとシャツを握り締めてきた。
これは後で不自然な皺が残るのではないだろうか。などとどうでも良い事を考える。
「……これ、思ったより、恥かしい、ね」
「………」
人に散々恥かしい思いをさせておいて、今更何を言うのか。
少々頭にきたので、上に扱き上げる時に括れの部分に力を込めて、絞るようにしてやる。
ジローが、息を詰めるのが判った。そして、じわ、と先端から滲み出るもの。
それはとろとろと溢れ、握る俺の手も一緒に濡らしていった。ぬるりとした感触に、何だか妙な気分になってくる。
明らかに息が上がっているジローは、こうして俺に触られて、気持ちが良くなっているという事だろうか。
滑りの良くなったそこを動かす度にくちくちと立つ水音を聞きながら、
先程俺に触れてきたジローも、俺を見てこんな風に考えたのだろうか、と、そうぼんやりと思い、そしてすぐに考えを打ち消した。
何だか物凄く、情けないような恥かしいような、それでいて妙な感じに身体が熱くなってきたからだ。
矢張り思った。まずい。
「はあ……はあ、跡部……、」
荒い息の中、小さく名前を呼ばれる。顔を上げると、ジローの余裕のない顔が目に入った。
何処か辛そうに眉は顰められ、額にうっすらとかいた汗で前髪がまばらに貼り付いている。
その頬は、面白い程はっきりとピンク色に染まっていた。
まずいと思いながらも、うっかりそれを可愛く思ってしまう自分に気付く。ジローはこんな顔もするのか、そんな少し感動にも似た思いで。
しかしだからと言って俺の前をまさぐってくるのを許せる訳では決してない。
「っだから、てめえは、何してやがんだ、よ……っ!」
驚く程の巧みさで俺のそこを暴く手を、必死になって掴み止めようとする。文句も切れ切れになったが、已むを得まい。
「やっぱさ、俺だけってのもあれだから、跡部のも一緒に抜いてあげる」
ピンク色の頬で、にっこりと。こんな時でも矢張り、屈託のない笑顔だ。
その物凄く納得のいかないふざけた主張にすぐに反論出来ずにいると、するりと俺の手を逃れたジローに入り込まれ直に握られる。
「……あ、てめ……っ」
ぞくぞくと、先程と同じ感覚に、びくりと背中が大きく震えた。何故ならば。
「……ほら、またちょっとおっきくなってるじゃん」
「……っ……」
こそりと、告げ口するように囁かれ、悪戯がばれた子供のような気持ちで唇を噛み締め、ぎゅっと目を瞑った。見ていられない。
ジローの熱い手に包まれたそこがそれだけで、そうされるのを喜ぶようにすぐにまた熱を持っていくのが自分でも判ったからだ。
制止の手も、声も、最早空々しい。最悪だ。
「ほら……ちゃんと拭かないから、ちょっとむれちゃったんじゃない?」
何だってこいつはこう恥かしくなる事ばかり平気で言うのか。非難の一つも言いたくなったが、しかし言葉にはならなかった。
「……っふ、ん、……っん、」
「……ね、ほら続き、して」
俺の手は再びジローのそこに導かれる。また新しく雫が零れたのか、先程より更にぬるぬるとした感触が手に伝わった。
何処にそんなに興奮する要素があるのだろうかと思ったが、
自分のそこもくちゅりと粘着質な音を立てるようになってからは、そんな事を考える余裕はなくなった。
一気に思考力が、落ちていく。
「……は、はあ、」
どちらのものともつかない、荒い息。くちくちと耳に付く水音。
ぬるつく、自分のものではないそこを擦りながら、何とも間の抜けた光景なのだろうなと、追い上げられていく熱の中でぼんやり思った。



今更隠すも何もないと、今度は綺麗に拭ってから身支度を整えたが、既に汚れてしまった下着はその努力を無にする。
色々な思いが混ざった溜め息をつきながらこそりと視線を向けると、ジローは実にすっきりと、晴々とした表情で帰り支度をしていた。
放っておくと鼻歌まで聞こえてきそうな勢いである。本当に、何と言う忌々しい奴だ。
俺はテニス部の備品のティッシュをこんな事に使って、居た堪れなさで一杯だというのに。
むかむかとした気持ちを発散すべく、ロッカーの前で屈んでバッグのチャックを閉めているジローの、
ふわふわとした触り心地の良い頭を思い切り叩いてやった。ぱかんと軽快な音が鳴り、少しすっとする。
「いってー!!何でまた叩くんだよ!」
「うるせえ。鍵が閉めらんねえだろ、早くしろ」
言いながらさっさとドアの方へ歩いていく。待ってよ、と慌てた声を上げながら後を追って来る足音。
ドアを閉めながらちらりと見たジローの顔は、結局またにこにこと笑顔だ。
何がそんなに嬉しいのか問い質したい気持ちに駆られたが、逆に返答に困る突っ込みが返ってきそうな気がして止めた。
何だか、これ以上余計な事を考えてはいけない気分になってきた。
ジローを拒めない自分だとか、ジローの嬉しそうな顔を見て、腹立たしいばかりでない理由だとか。
何だかんだと、結局ジローを突き放す気にはならないのだから、困ったものだ。
再び小さく溜め息をつきながら、跡部、跡部と喧しく俺を呼んでくるジローに顔を向ける。

にっこりと見上げてくる愛らしい笑顔が、こう言った。
「またこすりっこしようね!」
「しねえよ!!」





後書き:
こんな明るい(?)と言うか、ギャグぽい話は初めてではないか知ら。
色々と表現の足りない部分は多いですが、書いていて大変楽しかったです。
次回は「跡部の乳首開発の巻」です!(冗談です)

2007.11.8 シン




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