「何かお前って……虐めたくなる面、してんだよな」
「……こない、しといて……更にそれかい……」
どんだけ最低やねん、自分。は、は、と浅い呼吸の中、切れ切れに呟かれる言葉。
わざとらしく、殊更大きく腰を回すようにすると、ぎしりとベッドの軋む音が後からついてきた。
ふぁ、と不意を突かれて思わずといった間の抜けた声が、忍足の口から漏れる。
気を良くした俺は褒美とばかりに、動きを止める事無く忍足の前にも手を伸ばした。
互いの身体の間でふるふると揺れるそれは既に固くそそり立ち、
赤く膨れた先端から零れたものでぬらぬらと光っていた。
緩く扱いてやればそれだけでまた透明の液を溢れさせ、
忍足の口からは、押し殺し切れなかった声がか細く漏れる。
「ぁ……っは……ん、ん、ん、」
律動に合わせて、食い縛った歯の間からも零れ出てしまう声が居た堪れないのか、
大して意味もないのに自らの肩口に顔を埋めて誤魔化そうとする。
もっと効率が良いだろう、手で口を覆う事をしないのは、その両手を頭上でベッドに括り付けられている為だ。
俺から逃れようと腕ごと身を捩ったところで、
仰向けで大きく割り開かされた両脚の中心を俺に縫い止められ、叶わない。
無駄な足掻きの末せめて声は上げまいと、懸命になっているその姿がいちいち俺の加虐心をそそる事を、
忍足は、判っているのだろうか。
「バーカ……可愛いんだよ……」
「……っ……」
低く囁くように素直に言葉にすると、忍足が息を呑むのが感じ取れた、その一拍の後、
俺の熱でいっぱいに押し広げられたそこがきゅうと締まり、それまで以上に俺を圧迫してくるのが判った。
痛いくらいの刺激は、しかし容易く快感に結び付く。
「……っ急に締めんな……っ、はは、こんな風に言われて……感じんのかよ、」
恥かしい奴。最後の言葉は、耳元で直接吹き込むように囁いてやる。
ふる、と身体を震わせると忍足は、上気した頬を更に紅く染め上げ、瞳を潤ませながら息を詰めた。
堪らない。
忍足のこの顔が見たくて、いつも俺は、どうしようもなくなるのだ。
両手を戒め腰を押さえ付け、忍足の自由を奪ってまでも。半ば強引に、自分の熱を、押し付けてでも。
強い締め付けの中、対抗するように力ずくで腰を打ち付け突き入れると、
びくびくと身体を跳ねさせ今度こそ忍足は、声を抑える事が出来なくなった。
「っひ、あっ……ああっ」
堪らなく、可愛い。
「な、言えよ……ここが気持ちいいんだろ……?」
忍足は、必死に呼吸しながら潤んだ瞳をちらりとこちらへ向けてきた。
いつも掛けている眼鏡が取り払われている分、その熱っぽい視線はよりはっきりと俺の意識を絡め取り、
しかしすぐにぎゅっと閉じられる。
「し、知ら……んっ」
堪らなく、可愛い。
「……この俺に、そんな口聞くのかよ?」
薄く笑みを浮かべると、ゆるゆると扱いていたその根元を強く握り込んだ。
「いっ……た……ぁっ」
途端、引き攣った声と共に強張る身体。
「正直に言えよ、」
なあ忍足。熱の開放を塞き止めたまま、後ろは意地悪く弱い所を重点的に突いてやる。
もう随分前に見付けたそこを、大きく抜き差ししながら何度も擦ると、ぐちゅぐちゅと粘着質な水音が響いた。
忍足は、真っ赤な顔を歪め嫌々をするように頭を振りながら、息も絶え絶えに濡れた声で懇願してくる。
「堪忍……やぁ……っい、いから……っ」
ぞくぞくとした、言い様のない快感が湧き上がる。
ぎゅうぎゅうと締め付けてくるそこを掻き分ける自身の熱が、またその固さを増すのが判った。
かんにん、と、普段の低く響く声からは想像もつかない程の弱々しく掠れた声で、忍足がもう一度呟いた。
どくどくと、忙しなく血液の流れる音が、頭の中で大きく響く。
「は……仕方ねえな……」
笑いを滲ませながらも声が掠れてしまうのは、自分自身も余裕がなくなってきた所為だ。
忍足の前を開放してやると、そのまま両手で腰を捕まえ、今までで一番奥深くに突き入れた。
「あー……っっ」
「……ん……っ」
漸く開放された忍足は、それだけで呆気なく昇り詰める。
ぶる、と大きく身体を震わせると勢いよく白濁を飛ばし、互いの腹や自分の胸を濡らしていった。
もう目の前の俺もぼやけて見えていないような半開きの両目からは、ぼろぼろと涙を溢れさせ、
開きっ放しの口の端から幾筋も唾液を零し、ちらりと覗く赤い舌を引き攣らせ絶頂に喘ぐ忍足を見ながら、
その最後の締め付けに、自らもまた忍足の最奥にどくどくと熱を注ぎ込んだ。
「……は……はぁ、」
余韻に知らず背を震わせ荒くなった息を整えながら、ふと気付くと、
忍足はぐったりと脱力し、意識を手放していた。
「……またきつくやりすぎちまったな……」
肩を竦め低く漏らす。
汗でべとべとと額に張り付いている忍足の前髪を梳いてやると、
頬を上気させたままの、へなりと眉の下がった頼りない寝顔が見えた。
伏せられた睫毛に涙の粒が絡み、ちらちらと光っている。
少しの罪悪感と、それでいてまた内に篭ってくる熱とを感じ、そんな自分に半ば呆れながら、
戒めたままだった忍足の手枷を外す。
柔らかい布で慎重に結んだつもりだったが、矢張りそこは少し赤くなっていた。
未だ意識を飛ばしたままのあどけない顔を見下ろし、ふ、と、思わず笑みが漏れる。
堪らなく、可愛い。
「なあ……早くまた俺を見ろよ……」
それでも俺はまた、どうしようもなく満たされるあの顔を、あの声を、際限なく求めてしまうのだ。
じわじわと内側に溜まっていく熱を感じながら、俺は、
忍足の手首に付いた赤いしるしに、そっと口付けた。
後書き:
もういっそそのまま第2回戦に突入すれば良いですよね(愚)。
決して強姦のつもりはないのですが、割と無理強い系……すみません。ちょっと行き過ぎた愛情表現ですよ!
以前発行した「その瞳が言っている」の跡忍がこんな感じだったのでした。跡部様がひたすら変態で最低。
そして、ひたすら忍足が憐れな救いようのない、エロでした。楽しかったです(目逸らし)。
しかしエロは難しいですね。
2007.3.9 シン